major 第2場・前-a

Tm02

【登場人物】
・大山賢太……末広大学2年生。19歳。映研部員。初の監督に挑戦中。
・黒木カオル……末広大学2年生。19歳。映研部員。屁理屈が多い。
・水村好男……末広大学2年。20歳。映研部員。通称よっちゃん。
・猪又博史……末広大学映研OB。24歳。卒業してから2年。
・猪又美耶子……猪又博史の妻。22歳。
・谷 雪耶……猪又博史の友人。24歳。末広大学4年生。

【第2場(前半)】

     夕方の学生サロン。
     上手より、大山と黒木が熱心に話をしながら登場。
     大山は台本を持ち、メモをしている。

黒木 「よりによってコブシ型はないだろう、と思うわけだよ」

大山 「うん」

黒木 「だって、いいとこの奥様って設定なんだぜ。
    道具使うにしても、そのシチュイエションに合うやつ
    いくらでもあるだろう? 蒔絵の箱とか、螺鈿とか、漆塗りとか」

大山 「……うん」

     上手側の席に座り、会話を続ける2人。

黒木 「そっから、アンティークの鼈甲の張り形なんて出してごらんよ。
    どうだ、最高。すばらしい絵になるじゃないか!」

大山 「……うん」

黒木 「それなのに、あのコブシ型(コブシを突きだす)。
    一気におじゃんだ。醜悪だ。あれをエロスととらえているのかと思ったら、
    俺、悲しくなっちゃった。はっきりいってあれはAVより下品な映画だ」

大山 「黒木くんもAV見るんだ」

黒木 「(無視して)だからさ、小道具1個にも気をつかえって話だよ。
    物語にはさ、ムードってものがあんだよ。
    それにそぐわない小道具とか、いかにも話の都合つけるために
    出しましたって感じのとか、それじゃダメなんだよ」

大山 「……うん」

     大山、必死でメモをする。

大山 「……黒木くん、(おそるおそる)ちょっと聞いていい?」

黒木 「なに」

大山 「マキエノハコとかなんとかって、何?」

黒木 「蒔絵ってのは……蒔絵ってのは、漆に金や銀をふきつける
    伝統的な日本の工芸技法。螺鈿は貝殻を貼りつける技法だよ」

大山 「あーあー。重箱とかそういうのでありそうな、アレ」

黒木 「そうだよ。アレだよ」

大山 「あっでも、鼈甲なら知ってるよ。亀の頭で作るんだよねえ」

黒木 「(つぶやく)甲羅だろっ」

大山 「(気づかず)長崎の資料館で見たよ、
    修学旅行で行ってさ。おばあちゃんに根付け買って」

黒木 「なあ、じつは鼈甲って、遊女が使う張り形として発達したって、知ってる?」

大山 「……ううん」

     大山、ペンをテーブルに置く。

大山 「黒木くん」

黒木 「なに?」

大山 「(おそるおそる)ハリガタって、何?」

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