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L spin out the life 1

これは、映画「L change the WorLd」をベースに
創作した、二次創作(スピンアウト)小説です。

松山ケンイチさん演ずるL、いわゆる松山Lをフィーチャーした作品。
基本設定と登場人物は「L change the WorLd」と、
ほぼ同じで
それに独自の視点を加え、新たなテイストの物語に仕上げました。

映画をご覧になってないかたにも、お楽しみいただけるように作りました。
ただ、前作の映画「デスノート」「デスノート the last name」について
描かれている部分が、かなりあります。これらの作品においては
まず先にご覧いただいてから、お読みくださるのが懸命と存じます。

また番外編として
「15日目の雨の朝」「新しいぼくらの名前」があります。
こちらもあわせてお楽しみください。

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L spin out the life 《 1 》

 強く生きたがってる生命ほど、喰らって美味いもんはねえ。
 何かに執着してるとか、欲望に取りつかれた奴だと、それはもうたまんねえ味だ。
 その点、お前は本当に喰えない奴だな。

 * * *

 神になりたがっていたあの夜神月っていう洟垂れのガキが消えたのち、名前を書けば書かれた人間が死ぬノート、すなわちデスノートの所有権は、月の宿敵だった名探偵Lの手に渡った。そして俺様は自動的に、Lにくっついていく羽目になった。
 まあそれは決まりだから仕方ないとして。実はあと何日かの寿命だと自分で知っている人間が、いったいどんな悪あがきをするのか、俺としては少々楽しみでもあったのだ。
 ところがだ、ところが。
 全っ然おもしろくねえ、このLって野郎!
 世話になってたワタリとかいう老いぼれを弔ったあとは、日本での活動拠点のひとつらしい、都心にあるこのレジデンスに閉じこもり、ずっと仕事、仕事、仕事だ。俺が月に憑いてたときに、キラ対策本部で垣間見てたその姿と、まったく変わんねえ。退屈した俺が話しかけてもまるで無視。
 ワタリの残したファイルを横に積み上げあいつは、数ヶ国語を駆使しコンピュータで世界中のさまざまな捜査機関と連絡をとった。そして一週間ほどで五件の未解決事件を解決した。十三人の凶悪犯をとっつかまえ二件の事件を未然に防いだ。その合間にケーキを三ホールたいらげ、ドーナツとシュークリームとプリンとチョコレートとチェリーパイとバウムクーヘンにアイスクリーム、カステラも二斤食った。
 おいおいおい、俺様は大食い甘味王の観察日記をつけるために、ここまでついて来たわけじゃないんだぜ。自由にならない身の俺がいい加減、何か変化はないものかとうんざりしはじめた矢先、インタフォンが鳴った。

 ソファにしゃがみ込んだまま眠っていたらしいLが、億劫そうにパソコンを操作して、エントランスからの映像を呼び出した。
 モニタには、人の良さそうな東洋系の男が映し出されている。
「FBIより参りました。スルガといいます」
 そう名乗り、身分証を提示したあと、男はキョロキョロとあたりを見回しながらマイクに近づき「例のノートの後始末をまかされています」と小声でつけ加えた。
「……聞いてないです」
 Lがそう応えると
「すべて秘密裏に動いてますので」
 と、またささやき声で言った。怪しい態度。だいたいFBIの奴がこんな素っ頓狂な顔をしてるか? どちらかというとFBIよりお笑い芸人にふさわしいツラだ。
 スルガと名乗る男に、Lはそっけない口調で応答した。
「デスノートはすでに燃やしてしまいました。あなたにやっていただくことはありません。お帰り下さい」
「ま、待って下さい」
 スルガはしつこく食い下がる。
「キラとの闘いでFBIからもたくさん犠牲が出ました。例のノートが関わっていたことはわたしも密かに聞いています。
 ナオミもレイもわたしの大事な仲間でした。ぼくは自分が何もできなかったのを悔やんでるんです。せめて何かの役に立ちたいと思ってるんです。あなたが自分の生命と引き換えに、キラという殺人鬼を倒したことは知っています。だからせめてあなたの役に立ちたい。何でもします。何でもいいです。家事でも身の回りのお世話でも……」
 スルガが「家事でも身の回りのお世話でも」と言ったとたん俺は見逃さなかったぜ。Lの野郎が、背後に山と積まれた処理済のファイルとお菓子の残骸を、一瞥するのを。

 十数分後、俺たちはエプロン姿でせっせと働くスルガの姿を、隣室のモニタから眺めることになる。
「お前の考えてることはわかってるぜ。たとえFBIでも信用できない、そうだろL?」
 こいつは相変わらず、俺を無視したままだ。
 せっせと書類を片付け、掃除機をかけながら、とぼけ顔のスルガが時折するどい眼光を放っているのがモニタ越しでもわかる。きっと何か手がかりはないかと探しているんだ。
 FBIだってバカじゃない。あのノートを手に入れた者がどんな力を持ちどれだけ世界に君臨できるかを知ったら、ぜひ欲しいと思うだろう。しょせん正義なんて絵に描いた餅。どんなことをしても手に入れたいと思う輩がいても当然だ。
 俺はたまらずクスクス笑った。
 この男の態度にはそんな裏のご事情が見え見えだし。きっとあいつ、部屋がすっきり片付いたあたりでLに「ご苦労さま」って追い出されるんだろうな。
 ……ああでも、そうするとまた退屈になっちまう。

「ご苦労さまです。スルガさん」
 Lがマイクで、スルガに呼びかけた。
「しばらくうちにいて身の回りの世話をして下さい。引き続きよろしくお願いします」
 スルガが、モニタの向こうでほっとしたように人懐こい笑顔を見せる。そんなLの対応に、俺は密かに目を剥いた。
「休憩は自由にとっていいです。ただし室内は禁煙なのでタバコを吸われる際は屋外に出て下さい」
「えっ、ま、待って下さい。ぼくはあなたに何も言ってませんよ。どうしてぼくが喫煙者ってわかったんですか?」
 そう言いながら慌てるスルガに、Lは応えた。
「個人の気質、趣味や嗜好などはその人物の、仕草や行動に如実にあらわれます」
 ははーんなるほど。実際、如実にあらわれてるよな、お前にも。
 高い身長の割に体重は軽そうだ。青白い顔、毎日が変わり映えのしない白い長袖Tシャツとくたびれたジーンズ、ボサボサの頭。外見などまるで気にしない性質らしい。だがそのいっぽう、物にまともに触れない潔癖症のような仕草を見せることもある。食事も睡眠さえも常識的な人のとりかたをしない。指をくわえ爪を噛む行為はあまりにも幼児的だ。優秀な頭脳を備えているという割には、ひどくバランスを欠いた危ない奴。それがL、お前。
 極めつけ、そんなふうにまるで先の読めねえ人を食った態度だ。
 L、いったい何のためにこのスルガという男を招き入れる? いまのお前にとってはこの男の存在は厄介なだけじゃないのか?

 そうだ。察しのいい奴ならわかるだろう。こいつのそばに俺がいる、ということは、デスノートは燃やされていない。ノートはまだLの手元にあるのだ。
 この数日間、俺はこいつのそばにいて耳元でずっと囁き続けていた。デスノートを使え、使えって。しかし結果はこの通りだ。こいつはまったく聞く耳を持たなかった。
 だけどそれならそれで早くノートを燃やしちまえばいいんだ。そうすりゃ俺だってここから解放される。また新たな死神のノートを準備して誰かの前に落としに行ける。時間稼ぎをしているつもりならそれは無駄だ。たかが数日遅れたところで何の意味もない。人間界と俺たち死神に流れる時間はまるで違うんだからな。

 何をするつもりだ。ノートをそばに置いてL、何を考えてる?
 お前には時間がないんだぜ。
 死神である俺の目には、お前が自らノートに記したお前の死ぬ日がはっきり見える。
 敵を倒す。ただそれだけの目的で二十三日後と記した、お前の死ぬ日が。

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